―70:20:10モデルを活用した自立支援人材育成の取り組み―
今回、2025年11月27日・28日に山口県で開催された全国老人保健施設大会において当法人で2018年から約6年半、取り組んできた人材育成の取り組みについて報告した内容を簡単に報告したいと思います。
【発表タイトル】
「 外部と連携した自立支援の取り組みの振り返り~やりがいUPを図る人材育成 70:20:10 ~ 」
【はじめに】
先行き不透明で将来の予測が困難な状態である昨今、2018年に働き方改革関連法案が成立・交付されました。
同年、「チャレンジ2025」と銘打ち、職員がやりがいを持って働き続けられるような職場を作っていくため、外部と連携した自立支援の取り組みを開始しました。
この取り組み内容を職員の意識調査結果を踏まえて報告します。
【方法】
取り組みを4期に分けて説明します。
【学び直し期】
TRAPEというコンサルティング会社による自立支援の基礎を学習するプログラムである『自立支援型思考リーダー育成プロジェクト』という研修を実施しました。その研修で、介護保険の中心的概念である「自立支援」の本質についてしっかりと学び直しを行いました。
【第2期 コーチングサービス導入期】
TRAPEのオンラインサービスである「club TRAPE」をスタートさせ、全国の他法人の多くの多職種と対話を繰り返すことでより実践力を高めました。また、年3回「Keisenセミナー」として研修会を開催し職員のアップデートを行いました。
法人内では主体的に自立支援を推進させるチームとして『生活期リハビリテーション推進チーム』を発足し、法人の自立支援の考え方をまとめた虎の巻を発刊し全職員に配布しました。
【第3期 実践反復期】
とにかく学んだことをみんなで実践することを行いました。実践したことをしっかりと可視化するためにシートを作成し、実践したことを言語化することで振り返りもしっかりと行うことができました。
【第4期 自走移行期】
コンサルティング終了に向け、継続して取り組みを行っていくため組織の再編成を行いました。
【結 果】
職員の意識調査では、「取り組んで良かったか」 非常に良かった+良かった ⇒ 90.8%
「やりがいにつながっているか」 非常につながっている+つながっている ⇒ 75%
「専門性の向上につながっているか」 非常につながっている+つながっている ⇒ 81.6%
「仕事の楽しさにつながっているか?」 非常につながっている+つながっている ⇒ 67.1%
「自分の成長につながっているか?」 非常につながっている+つながっている ⇒ 82.9%
「利用者に効果はあるか?」 とても効果がある+効果がある ⇒ 92.1%
といった満足度の高い回答が得られました。
理由としては、「スキルUPにつながった」「多職種での実践が良かった」「利用者の変化をとらえることができた」「考え方が変化した」「関わりの根拠をもつことにつながった」「働きやすい職場になった」「しっかりと利用者に向き合えるようになった」「考える習慣がついた」といった意見が聞かれました。
【考 察】
職員の満足度が向上した理由としては、“70:20:10モデル”の学び方を効率的に活用できたことにあると考えています。
70:20:10モデルとは、アメリカの人材開発企業「ロミンガー社」によって提唱された理論で、以下のような比率で学習が行われることが効果的であるとされている考え方です。
70%::実践する経験からの学び
20%::他者からの指導やフィードバック
10%::研修や自己学習
・研修・座学での学びについて、理解が難しく感じる内容も自分たちの言葉として虎の巻にまとめ、我がこと化することで研修内容が身近なものとなり、主体性や責任感をもって能動的に行動することにつながったと考えています。
・共通言語で話せる環境はより多職種間の対話機会を増大させ、更なる学びにつながったと考えます。
・他者からの学びに関しては、「club TRAPE」のサービスで法人外の多職種と意見交換し、セミナーや事例報告会等で法人内の他施設職員と意見交換するなど、さまざまな人と対話する経験が非常に学びにつながったと考えています。
・実務経験の学びとしては、事例演習で学びを深めたことを日常業務の中で徹底的に繰り返し行ったことにあると考えます。
・本人の想いの聴き取りや行動の意味を深堀して考えることを習慣化させたことが、職員の行動を変えることにつながり「考えること」「対話すること」が楽しいと感じるようになり、結果としてやりがいへとつながっていったのではないかと考えます。
【まとめ】
「取り組みの我がこと化」「多職種との対話」「実践の習慣化」が『一人ひとりのwell-beingを高めるための答えなき深堀り思考』という新しい価値観や行動様式を創り職場を活性化させ、職員のやりがいの向上につながりました。
今後さらに法人一体となり実践を深め、多くの人のwell-beingを取り戻すことに寄与したいと考えています。
最後にTRAPEの鎌田さんはじめ本取り組みにご協力いただいた全ての皆様に感謝いたします。

